
岩本貴志
D800EとD850の撮り比べ、シャドーノイズ対決!ネオワイズ彗星で検証した
更新日:2022年2月6日
新しく導入したD850に、いろいろと仕事を引き継ごうと撮り比べをしているのですが、撮影していて、そう一筋縄ではいかない事が分かってきました。
前回のネオワイズ彗星の撮影を撮り比べて分かった事。
それは、古いD800EのほうがD850よりもシャドー部のノイズ、特に階調飛びが少なく、諧調表現が豊かだという事。
使用感度はISO400。
今回は前回に引続き、その事について更に深堀りし、検証していこうと思います。
目次
■
サンニッパで遠ざかるネオワイズ彗星を撮影
8月1日前回の彗星撮影以降、日暮れ時、西の空を「晴れてるかなー?」と、頻繁にながめていた。太陽から日々遠ざかるネオワイズ彗星を撮るためだ。
太陽から遠ざかるほどに、彗星自ら放出されるガスやちりも少なくなり、どんどんと暗く見難くなっていく。
地球からも急速に遠ざかっていくので、きっとすぐに見つけられなくなってしまほどに暗くなってしまうだろう。
しばらくの間、雲が厚く彗星の観測は出来なかったが、やっとの事撮影のチャンスが巡ってきたのは、8月6日。
据付けるポタ赤、スカイメモTの極軸の方向の感じは大体分かったので、今回は、でかくて重いサンニッパでの撮り比べをした。
暗い被写体を映し出すのに、F2.8はその重さを加味しても、とても魅力だからだ。
とりあえず、肉眼では見えないので、彗星の場所を特定するために今回は、ケンコー・トキナー100mmf2.8マクロを使用して撮影した。
このマクロレンズ、逆光にも強く非常にシャープで高性能なレンズだ。
無限遠付近でも画質はいいのだが、遠距離付近のピントを合わせるのはストロークが短く非常にやりづらい。
これはマクロレンズの宿命だろう。
彗星の位置は、前回よりも天球上を、結構南側(左)に移動している。
まだ、写真には彗星ブルーの光が写っていたので、場所はすぐに特定出来た。
前回よりも、彗星の光量はかなり落ちているように見える。

雲が多いが、透明度は高い
前回の撮り比べの結果の粒状感、ノイズの少なさから、どうしても優先的にD800Eを使ってしまう。
撮影画像
D850の汚名返上といきたい所だが、さて結果はどう出てくるか。
今回は感度をISO200に下げて、D800Eと比較する事にした。
絞りは開放のf2.8で露出はそれぞれ20秒。
両写真とも、彗星が分かりやすくなるように大体同じ範囲が入るようにトリミングしてある。
まずはD800E
長年使ってきて、間違いなく良く写ってくれるという信頼感がある。

サンニッパ開放、20秒の露出
光害が少なければ、彗星の淡い光ぼうがもっと広がって写る事だろう。
ナイロビの空は東京都心の空と比べれば、まだまだずっとまし。
今回、ナイロビの街の中でもこんな天体撮影が出来るという事が分かったのは収穫だった。
彗星の右上に見える光ぼうは球状星団のM53。
初めてネオワイズ彗星を探していた時、これが彗星かと思って何枚も撮影してしまった。
前回は、なかなか決まらなかった極軸であったが今回はすぐに決める事が出来た。
300mmで20秒の露出でも、殆ど流れないほどに決まった。
極軸は合っているはずなのにD800Eの作例も、D850の作例も同じ様なブレが発生している。
どちらとも撮影はブレないよう、細心の注意をしている。
特にD850はシャッターを作動させず、無音撮影しているので、無風状態なのでブレの要素は無いといってもいい。
星像がぶれたようになるのは、スカイメモQのピリオディックモーション由来のものだろうか?
スカイメモの駆動用モーターはステッピングモーターを使用しているようで、対恒星時の追尾となると周波数はかなりゆっくりしたもの。
このモーション、時々引っかかるのか大きく振れるようである。
300mmともなると、それがブレの原因となってしまっている事が考えられる。
そもそも耐荷重の3kgを1Kg以上超えているので、保証対象外の使い方であるが。
スカイメモTおそらく、使えるのは180mmぐらいまでだろうか?
300mmだったら、耐荷重に収まるサンヨンまでだろう。
この事は、いつになるか分からないが、そのうち検証しようと思う。
そして、同条件D850で撮影

D850、同条件での撮影
どちらもこのサイズだとどっこいどっこい、彗星の姿は美しく表現されているようだ。
D800EとD850の写りの違い、パッと見ではそんなに見られない。
彗星の軌道
ここで一つ、彗星の位置がシュミレートした位置からずれていた事について、
ステラナビゲーターのシュミレーションにウィキペディアから引っ張り出したネオワイズ彗星の軌道データを入れ込んだ。
すると、8月6日、20:34の彗星の位置はこの球状星団M53の左上とシュミレートされていた。

シュミレートと実際の彗星の位置の違い
彗星の噴出物によって軌道が若干ずれたのだろうか?
また、周辺の惑星の重力によって軌道が変わったのだろうか。
使用した起動データ自体も、彗星発見間もない頃のもので、精度も出ていなかったのかもしれない。
だとすると、また次回帰ってくるまでの年数も、予測から大きく変化している事だろう。
彗星は画面右から左に向かって、天球、北から南に向かって動いている。
感じ的には軌道が若干西にずれて、速度も少し遅くなったように見える。
6700年と予測されていた公転周期も短くなったはずだ。
撮影画像比較
さて、話をD800EとD850の写りの差に戻して
下には、分かりやすいように、さらにピクセル等倍、900x600にトリミングしたものを並べた。
どちらも感度ISO200、絞りはF2.8、露出は20秒、写真は上と同じもの。

ピクセル等倍
撮影時間の若干の差であるが、よく見ると、彗星はその間にも微妙に動いている事が分かる。
高感度ノイズ設定は両機種とも、最もバランスが取れたノイズ補正が行なわれた事から標準に設定。
ISO200で高感度ノイズ補正されるかは、不明だが。
(後日、最低感度に下げても、高感度ノイズは画像処理に影響している事が分かった。)
ピクチャーコントロール、ホワイトバランス、アクティブDライティングなど他設定もすべて同じにした。はず・・・
両作例とも14ビットRAWで撮って、彗星がきれいに浮かび上がるようにトーンカーブで整えて掲載している。
右の作例のほうが若干大きく見えるのは、画素数D800Eの3600万画素と、D850の4500万画素の違い。
どちらもピクセル等倍で出しているので、画素数が大きい分大きく写っている。
結果
感度をISO200まで落とした事によって、画素数の差を考慮してもD850の方が光芒がより大きく広がって見える。
前回のテストと逆転した結果。
感度を下げる事によってダイナミックレンジが広がったのだろうか?
前回、感度ISO400設定だとD850は、粒状感がガサガサになりすぎて、彗星の光芒の広がりも、色の諧調もかなり弱くなってしまっていたのに比べると、かなり健闘している。
シャドーノイズ特性
上の作例比較ではまだわかりずらいな、という事で。
さらに拡大、ピクセル200パーセント表示で並べてみた。
この作例ではさらに粒状感を強調するため、右下の三角形部分だけトーンカーブでシャドーを中心の128まで持ち上げた。
両作例とも全く同じ画像処理を行っている。

ノイズのガサガサがよく見えるようになった
ピクセル200パーセントまで拡大するとノイズの出方が一目瞭然となった。
左のD800Eの作例は、8年前に発売されたにもかかわらず、滑らかな粒状感で荒れも殆どみられない。
ノイズを分かりやすくした右下の三角の部分を見てもらっても、その質感、粒状感は非常に滑らかで、諧調とびや荒れが少ない事が分かる。
右側D850の作例のノイズは、200%に拡大して、より目立つようになり、D800Eよりもノイズが大きいことが一目瞭然となった。
右下のノイズが分かりやすくした部分を見ると、感度ISO200にもかかわらず、シャドー部の粒状性、諧調飛びを起こして結構荒れている事が分かる。
この諧調飛びのノイズ、写真を汚く濁してしまう。
個人的な感想では、どちらもISO200の設定で、D800EがISO100の粒状感だと仮定すると、D850の粒状感はISO640ぐらいだろうか。
おせいじにも、D850画質がいいとは言いがたい。
D850高感度粒状特性
やはり、前回の撮影で感じた通り、D850のシーモスセンサーのシャドーのノイズ特性はあまり良くないと言えそうだ。
これは、高感度ノイズ処理で補正出きるものだろうか?
まずはD850での、感度ISO200からISO25600の写りの違いを比較しやすいよう作例を並べた画像を作ってみた
高感度ノイズ補正設定は、全て弱にしての比較
ピクセル等倍、200x300にトリミングして並べた。
撮影は8月1日に行なったもの。

感度の増加と共にノイズが増えていく
高感度ノイズ設定を、標準や、高いに設定すれば、ノイズはもっと減ってくれると思われる。
その効果の程はどの程度のものなのか気になるところ。
今度は、同じくピクセル等倍、180x600にトリミングしたものを、処理の効果を分かりやすいように、高感度ノイズ設定を変更して並べた。
今回、ISO25600でしかテストしていないが、その変化の様子は以下の通りである。

感度25600で、高感度ノイズ補正変更による変化