
岩本貴志
エンジンスタート、トラブルシューティング、その1(ランクル75 1HZ 4200cc ディーゼル)エンジン不調の原因と対策
更新日:2022年7月27日
アフリカと日本を股にかけ活動するカメラマンのブログへようこそ。
このブログでは、管理人がケニアで乗っている愛車のランクル75型、トゥルーピーの修理記を掲載しています。
この車、今年で生産から30年、購入から19年目に突入しました。
ますます快調に動いてくれるのですが、たまに体調を崩すようで、今回は燃料ラインの不調が発生したので修理しました。
このランクルトゥルーピー、日本では販売されていませんが、アフリカ各国、オーストラリアなどでは今でも生産、販売されている車です。
75はその中でも古いタイプで、前のサスペンションに板ばねを採用したタイプです。
今回は、18年間の間に起こったエンジンスタートの不調と、その原因、修理した方法、さらには再発防止策についてまとめてみました。
このブログのコンテンツ
■
1、長年乗っているといろいろと不調が出てくるもの
現在管理人の乗っている車は1991年生まれのランクル、HZJ75 トゥルーピー。
エンジンは1HZ、6気筒4200ccのディーゼルエンジンを搭載。
製造からそろそろ30年が経過、乗り始めてからも既に18年が経過している。
年数の割に走行距離はまだ22万キロほどしか走っていない。
実際は定かな走行距離ではないが。

1HZエンジン、グロープラグの通電チェック中
これぐらいの年数が経過すると、各種部品がヘタり、走行していて多種多様な事が起こってくるものだ。
そんな事態に対処しながら車を快調に保っていくのも、古い車を乗っていく醍醐味だ。
今までにどんな経年劣化の症状が起こったか、上げてみると
スターターモーターの、ブラシが真っ黒に変色、回りにくくなりブラシ交換、ブラシが一本断線した事もあった
ブレーキマスターシリンダーの内側が、長年の使用で削れてブレーキが利きにくくなった、ピストンを2度交換の末、全て新しいものと交換
各車輪のブレーキシリンダー、液漏れ交換
ハブ、デフ、液漏れ発生、シール類交換
クラッチシリンダー、クラッチ側ピストン損傷、ピストン交換
スピードメーターケーブルが切れかけ交換、2回
プレヒート用のグロープラグが切れ交換
ブレーキブースターの真空漏れが発生
ドアハンドル交換、運転席側は2度
とりあえず思いついたものを上げたが、他にもきりがないほどだ。
こんな古い車でも、流石はサファリの王者ランクル、殆どの消耗部品はわりかし安価で、こちらの国では結構な田舎でも手に入れる事が出来る。
なおかつ構造もシンプルで、頑丈な車、修理も大抵自分で出来てしまう。
自分で修理を行えば、維持費はそうかからない。
磨けば磨くほど輝き、調子が良くなっていく。
走る楽しさ、いじくる楽しさと、乗れば乗るほど、いじればいじるほど、愛着が湧いてくる車だ。
という事で、今回はそんな管理人自身が、かわいがってきた75トゥルーピーの、今までに起こったエンジントラブルと対処法について書いていく事にした。
(全ては、管理人の経験談で、修理マニュアルではない事をご留意願います。)
電気系統をいじくる時は基本、思わぬ事故を防ぐためにも、バッテリーのネガティブターミナルをはずす事を忘れずに!
今時のハイテクマシーン、バッテリーターミナルをはずすのも注意が必要そうですが。
全ては自己責任でお願いします。
2、オルタネーターのトラブル
18年前に購入して最初に経験したトラブルは、バッテリーの電圧が下がり、エンジンを押しがけしなければならなくなったトラブル。
原因は、オルタネーター。
症状
夜間走っていて、どうもヘッドライトが暗くなり、電圧が下がっている事に気が付いた。
さらに走っていくうちにバッテリー電圧もどんどん下がっていき、最終的にセルモーターではエンジンがかからなくなってしまった。
テスターで調べてみると、エンジンの回転数を上げても電圧が上がらない。
という事で原因はオルタネーターだと分かった。
原因
オルタネーターが不調になった直前に、高圧洗浄機でエンジンルーム内を洗浄していたので、おそらく洗浄時の水が悪さをしたものと思われる。
という事で、オルタネーターを修理した。
修理
ICチップは無事で、壊れたのは外側に巻かれているコイルで、断線していたようだ。
不良コイルアッセンブルをオルタネーターから取り外し、交換した。
後から知ったのだが、リビルド品を買ってしまったほうが安かったようだ。
苦労したかいもあり、オルタネーターの仕組みも知る事ができた。
再発防止するために
高圧洗浄機でエンジンルームを清掃する場合、防水パッキンなどがへたっている古い車は注意が必要そうだ。
その後、エンジンルーム内の洗浄は、極力水は使っていない。
エンジンルーム内にヘッドライト用に設置したリレースイッチ類は、何度も交換している。
原因はリレー内の水の浸入によるさび。

ボンネット内部のプレヒートリレー、大電流の流れるリレー内部
バッテリー脇に配置されている大きな、スターターモーターとプレヒート用のリレー、結構値の張るリレーだ。
ここは特に水に注意必要がありそうだ。
こちらは一度、開けて内部のサビを落としている。やはり水気が原因。
防水処理されている部品も、パッキンなどの樹脂類は経年劣化で硬化し防水効果は年とともに落ちていくもの。
余計な出費やトラブルを避けるために、古い車は、なるべく水洗いは避けたほうが良さそうだ。
その後、電装品を多く積んだので、オルタネーターは一回り大きなものに交換した(リビルド品)。
といっても16年もほど前の話。
交換してから、今までに全くトラブルは起こっておらず、今でも快調に定格電圧内で発電してくれている。
もちろん、トラブル以来高圧洗浄機でのエンジンルーム内の清掃は行なっていない。
ボディ下部からの高圧洗浄する時は、オルタネーターに水がかからないようにしている。
気にしすぎかもしれないな。
3、暑い時にエンジンがかかりにくい
エンジンがスタートしないトラブルは、大抵スターターモーターの力不足。
バッテリー電圧の低い朝の寒い時間帯が多いのが一般的なのだが、それと全く逆のトラブルに見舞われた。
症状
長時間走行後エンジンが温まって、バッテリー電圧も十分あり、スターターモーターが元気に回っているのにもかかわらず、エンジンがスタートしないという症状。
走行中にエンジンが止まってしまう事も。
そんな時、いくらがんばってもエンジンはかかってくれない。
エンジンが冷えてくると、エンジンがかかりやすくなる。
面白い事に、寒い時間、朝一の始動は全く問題ない。
原因
この問題は、いろいろと調査を進めていくうちにインジェクターポンプが原因だという事に辿り着いた。

取り外したインジェクターポンプ
この部品、燃料を高圧で各シリンダーにタイミング噴射するポンプで、1HZディーゼルエンジンの心臓部にあたり、それなりに値段も張る。
なぜ、インジェクターポンプが不調になってしまったかを辿っていくと、原因は安く質の悪い軽油が原因だったようだ。
その時まで、「燃料などみな一緒!」という勝手な判断で、なるべく安いスタンドで給油していた。
それが繰り返されていくうちに、インジェクターポンプ、ローターの部品にダメージがいってしまったように思う。
そんなダメージによって、十分な圧力でシリンダー内に燃料が噴射されなくなってしまったのだろう。
安物買いの銭失いとはこういうものだと、つくづく思うのであった。
今から18年前、結構怪しいスタンドも多く存在していた。
今でも、地方に行くとポリタンクにつめた軽油を売っていたりするのだが、値段は多少安い。利益を上げるため何かしら混ぜ物をしている事が疑われる。
話によると、エチオピアとの国境に近い場所では、インジェクターポンプが半年ももたない事があるという。
そこで手に入るのは、そんなポリタンクに入った質の悪い軽油のみ。
修理
修理は、ポンプのローターの交換と、各シリンダーに据付けられている、インジェクターのノズルも新しいものに交換した。工賃はおよそ45000円。
インジェクターポンプのローターを交換する事によって問題は解決した。
3年前にもインジェクターポンプのサービスを行なった、その時の様子は動画にしてまとめた。
再発防止するために
今では、スタンドの銘柄と過去のエンジンの調子などを考慮し、軽油には結構気を使っている。こちらでは最近T社の軽油がいいようで好んで使っている。
アフリカの国々では、軽油の銘柄によってエンジンのパフォーマンスがかなり違ってくる。
始動のしやすさ、アイドリングのスムーズさや、エンジンのパワー、黒煙の出方まで違う。
エンジンが調子よく回る軽油は、エンジンを長持ちさせる事だろう。
どれも日本では無さそうな問題だな・・・
日本にある寒冷地仕様や、温暖地仕様の軽油のパフォーマンス違ってくるのだろうか?
そういえば、てんぷら油って、ポンプに負担いかないのかな?
4、朝一の始動、しばらくの間エンジンが大きく振動、白煙をモクモクと出す
症状
朝一のエンジンをスタート直後、しばらくの間、エンジンはガタガタと大きな音を発し、白い煙をモクモクと噴出。
こんなスタートをするようになった事があった。
原因
すぐに、一部ピストン、グロープラグのプレヒート不足が原因だと直感。
テスターで確認してみると、思ったとおり、各シリンダーに配置されているプレヒート、グロープラグのうちの一つが断線していた。
6気筒のうち、5気筒だけがプレヒートされ、残りの1気筒がプレヒートされず、不発。
不発の燃料の霧がマフラーから噴出された形になっていた。
一気筒爆発していない事で、回転バランスが崩れる事によって、ガタガタと振動と音を発していたのだ。
エンジンをかけてからちょっと経つと、音も煙も消える。
周辺の気筒から熱が伝わり、不発だった気筒も点火するようになるだ。
修理
購入時、グロープラグは全て交換した。
その取り外した6本のグロープラグは捨てずに取っておいたので、断線したものをそれと交換した。

取り外したグロープラグ
交換すると、問題はすんなりと解決した。
このグロープラグをエンジンブロックからはずす作業は、潤滑油を十分浸透させ、時間を掛けてゆっくりと作業を進めたほうがいいだろう。
力づくで作業を行い、グロープラグが途中で折れてしまった
という記事をネットで見た事がある。
そんな事になってしまったら、トンデモ無い悪夢!

慎重に作業を進める
という事で、つい最近もグロープラグを1本交換したのだが、潤滑油が十分に浸透するのを待ってから、ソケットレンチでまっすぐ力が加わるように、上を十字にして慎重に慎重に作業を進めた。
再発防止するために
特に再発を防止する方法は無いが、たまにこのブログの表紙の写真のように、各ブロープラグの通電状況を確認してあげるといいだろう。
通電していなかったり、通電しにくいようだったら新しいものと交換。
5、バッテリー電圧が十分あるのに、スターターモーターが元気よく回らない
症状
バッテリー電圧は十分あるのに、スターターモーターが元気よく回らない。
こんな時、まず疑うべきはスターターモーターのブラシ。