- 岩本貴志
無事巣立った幼鳥、「都会のオオタカ、3」
最終更新: 2020年10月31日
8月8日の朝、オオタカが飛び去ってから、今日まで戻らない。
誰も何処へ行ってしまったのか分からない。
巣立ちを終えたのだろう。
自らコゲラの狩りを成功させてからは、親鳥を「ピーョ、ピーョ、・・・」と呼ぶ事もほとんど無くなり、巣立つ前の数日間は、少しずつ活動範囲を広げ、一度どこかへ飛んでいくと、なかなか戻らなかった。
ほとんど鳴かなくなっていたので見つけにくく、観察、撮影するのも日に日に困難となった。
巣立っていくのはさびしいが、とてもうれしい事だ。

みんな、色々とありがとう!無事に巣立てました。
決して広いとはいえない都市公園でオオタカが繁殖を成功させ、巣立つのはある意味奇跡的で、最初の頃は誰も成功するとは思っていなかったと聞く。
ここは川沿いの住宅地に挟まれた細長い公園。
この場所オオタカが繁殖、巣立ちに成功したケースは今回が初めてだそうだ。
周辺に住む人々もオオタカを愛していて、「今日のオオタカはどうだった?」、「4日もセミしか食べていないのよー、かわいそう!」等々カメラマン、バードウォッチャーたちと近隣住民も打ち解け、会話も弾んだ。
カメラマン、公園管理局そして周辺住民の理解に大きく貢献してくれた人達がいたのを知り、それが今回のオオタカ巣立ち成功にとても大きかったのだとも感じた。
そして、いつの間にか周辺にはオオタカをめぐってのコミュニティーが自然に出来上がっていた。
2月にオオタカが交尾を始めて以来のコミュニティーのようで、このオオタカの生活史を把握している人も多い。
都市部でここまで住民の理解が得られ、希少鳥類がうまく育ったケースは珍しいそうで、これから都市での希少生物保護へのモデルケースとなっていけばいいと思う。
管理人にとってはたった1週間の短い期間だが、ファインダー越しに様々な表情を見せてくれた。
いくつかここに紹介する。

水浴び後、近づくカラスを脅し追い払う
以前、母鳥が水浴びした後、まだずぶ濡れの状態でカラスに襲われてしまい、母鳥は大きな怪我を負ってしまった。
水浴びをしたばかりで羽がまだ乾ききっていない幼鳥はカラスの危険を知ってか、近寄ってくるカラスを威嚇し追い払った。
幼鳥だとは思えない威厳に満ちた表情だ。
こんな表情で向かってこられたらカラスも逃げずにはいられないだろう。
普段はほとんどカラスを相手にしないほどになっていたのだが、羽が濡れているときは様相が違っていた。

カラスの嫌がらせに動じないオオタカ
ここはもともとカラスの繁殖、憩いの場、カラスにとってオオタカは目障りでしょうがない。
カラスはチャンスさえあればオオタカを嫌がらせ、追い出そうとする。
オオタカはカラスの嫌がらせにほとんど動じず、無視されたカラスは威厳を失っている。
オオタカはカラスを狩り殺し食べてしまう事もあるので、カラスも注意深く攻撃をしかける。
オオタカが巣立ち去った後この場所はカラスの楽園に戻った。
カラス達は皆「カー、カー」「ガー、」「カー」と自由が戻った喜びをいつまでも鳴き交わしているようだった。
オオタカの幼鳥はこんなお茶目な姿も見せてくれた。
セミを捕まえたまでは良かったが、
セミの羽をむしりとっている時に手を滑らせセミを落としてしまった。

「あっちゃ~、 俺のセミが落ちていく ~」
羽ごと食べてしまえばいいと思うのだが、羽は毎度かなり時間をかけてむしってから食べるのだ。
けっこう、オオタカはセミ食にはこだわるのだ。
その後にとった表情は。

頭を掻いた、
巣立つまで、ほぼ毎日姿を見せてくれて、目の前で色々な表情を見せてくれたオオタカ。
威厳に満ち、時には愛らしい姿を見せてくれたオオタカは多くの人々にとても愛されていた。
オオタカの幼鳥が、巣立ちどこかへ行ってしまってからは、皆、寂しいと口をそろえる。
どこかでたくましく生きていって欲しい。
そしていつの日か、再びここで繁殖してくれたら、とてもうれしい事だ。
おわり ■
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