- 岩本貴志
「カイツブリ観察日記」1、日本帰国中、子育て中のカイツブリを追った!
最終更新: 2020年10月29日

今年6月29日、親鳥を囲んで元気に育ちつうある4羽のカイツブリの雛
現在単身帰国中、半年ぶりの日本、東京。
久々のブログ更新。
夏に日本に帰るのはしばらくぶりで、暑さの本番はまだこれからだというのに体は暑さで悲鳴を上げている。
自分の体がどこまでこの暑さに順応するか、うちわ片手に暑さを堪能している。
アフリカは暑い!と思っている人は多いけれど、ケニヤのナイロビは赤道にも程近く標高も1700メートルと高地なので東京のように暑くなることは無い。
海も500キロと離れているので空気はカラッとしていてさわやかだ。
さらに7月は1年のうち最も寒い時期、寒いといっても大した事は無く薄めの長袖をちょっと羽織ればすむ程度。
ナイロビに関して言えば一年中暖房も冷房も必要ないほど気候には恵まれている。
さてさて、
一通りの撮影は出来るように日本へは必要最低限の撮影機材は持ち帰っている。
自分からカメラを取り上げられたら、ただのおっさんである。
カメラマンとうたっているからにはカメラは自分の体の一部とでもいおうか、切り離せない存在である。逆にカメラを持っていれば誰でもカメラマンともいえるな~。
なにはともあれ、なるべくただのおっさんにならないようにカメラを持ち歩くように心がけている。
水辺に行けば暑さがしのげるだろうと、家から程近い東京、井の頭公園に行ってみた。
井の頭公園の池で、子育て真っ最中のカイツブリを見つけた。
雛は4羽、観察している人に聞くと生後1週間ほど、もともと6羽の雛がいたそうだが、何らかの理由で2羽の雛は死んでしまったそうだ。
残りの4羽が無事に育ってくれる事を祈りつつ、場所も都合良いので、子育ての様子を観察、撮影していく事にした。
親鳥の一羽は忙しく雛たちにえさを捕まえては与え、もう一羽の親は雛たちの周辺で外敵を警戒している様子。
つがい同士役割はあまり交代してない。
どちらが母親だろうか?勝手に雛に寄り添っているほうをなんとなく母親と思ってはいるが、雌雄同体なので、実際どうなのか分からない。
通り行く人たちは皆そろって「お母さん!」と呼んでいて、誰一人「お父さん!」と呼ぶ人はいない。
ま、お母さんと呼ばれているほうが雌ということで、いいかな。

忙しく雛に餌を運ぶ親鳥
一昔前と比べると井の頭公園の池の水の透明度は驚くほどに良くなっていた。
池の水抜きと底の日干しを行う、「かいぼり」の効果だろう。
さすがに深いところまでは見えないけれど、水中を潜っていくカイツブリを追っかけていけるほどの透明度。
一昔前は水面しか見えないような濁った茶色い水。
今年、最後のかいぼりをやるそうだ。
10年後の井の頭公園がどうなっているか楽しみだ。
いろんな生物が戻ってきてくれるといいな。
この透明度は食べられる側の魚に有利なのか?それとも捕まえる鳥のほうに有利なのだろうか?
魚にしてみれば、いち早く見つけられてしまうだろうし、一度見つかったら逃げきるのは難しいだろう。
魚にとっても敵を素早く見つけられて物陰に隠れられるというメリットもあるだろうけれど、最終的には視覚メインで獲物を捕まえる鳥のほうに有利になるだろうと思われる。
魚も、習性など変えながらうまく適応していく事だろう。
野性の生態系、常にいたちごっこで変化が止まる事は無い。
捕食者は、餌になるやつがあってこそ、餌が無ければ捕食者は存在できず、捕食者がいなければ、その種は増えられるだけ増えていくが、自ら招く環境悪化などで限界が発生し適当なところで数を落ち着いていく。
そこに人間が複雑にかかわった上に、現在の生態系は成り立っている。
カイツブリについて説明をすると、東アフリカの淡水湖や湿地帯やちょっとした池でもごく普通に年中見られる鳥だ。
一度100羽ほどの大きな群れをタンザニア、アルーシャ国立公園の湖で見た事もあるけど、それは特殊な例で、大抵はつがいとその子供たちのように家族単位で暮らしている。
縄張り意識が強く、
泳ぐのに非常に特化しているが、空も飛ぶことが出来る。
水かきの付いた大きな足は体の一番後ろに付いて歩くのは苦手。
水中では効率よく強力な推進力を発生させ、見ていて驚くほど速く素早く方向を変えながら泳ぐ事が出来き、逃げまどう魚を効率よくつかまえる。
見ていて、30秒ぐらい潜る事が出来るようだ。

カイツブリの水中を泳ぐ姿は、井の頭公園内の水生物園で見る事が出来る。
飼育下だからだろうか、水槽の中では外の池で見るような素早い泳ぎはしない。

あまり跳ぶ姿は見せないが、ちゃんと飛ぶ事は出来る。
いつの間にか、今までいなかった池に現れたりするので、
知らぬ間に長距離も飛んでいるようだ。
水面より水中のほうが楽に速く移動出来るようで、ちょっとした移動でもちょくちょく潜水して移動する。
水中を移動する事によって餌となる魚やえびに遭遇出来るチャンスも狙っているのだろうが、餌をくちばしでつかんだまま潜水して雛に運ぶので、水中の方が移動するのが楽だという事が伺える。
また、敵になるべく巣が見つからないように警戒しているかもしれない。
水面でも外敵を追い払う時などもものすごい勢いで泳ぐ事が出来る。泳ぐというか水面を走るといったほうが妥当かもしれない。

頭を下げて猛スピードで敵に突進するカイツブリ
この水上、水中での特化は裏を返せば退化で、地上で歩く事は非常に苦手だ。
巣の上を跳ねるように歩くのは見られるが、小さな巣の上なので歩いているといえるかは疑問。
長距離を歩いている姿は今まで見た事が無い。
こんな地上ではまともに歩けないような体の作りなので、地上では外敵に対して手も足も出ない。
空を飛ぶのにも水面を長距離滑走して加速する必要があるので、地上からは飛べない。
子育ては外敵に襲われる危険の少ない水面に浮き巣を作って子育てをする。
材料としてここ井の頭公園では、水草や落ち葉、捨てられたビニール袋などを使っているようだ、流されないように木の枝などに引っ掛けて作っている。
今回観察したカイツブリの家族、その後この巣によってとんだ災いが降りかかる事になってしまった。
何が起こったかはこの後2回に分けて紹介しようと思う。

ちょっと前まで心地よく収まったはずなのに、なかなか親鳥の背中に乗り切れない4羽の雛。

「よろしく!」