
岩本貴志
シグマ120-300mmf2.8初代のレンズ、使うほどに愛着の湧く実用レンズ
更新日:2022年11月15日

今回ご紹介するレンズは、シグマの初代120-300mmのf2.8レンズ。APO 120-300mm EX DG HSM。
管理人の妄想に基づいて、動画撮影での使い勝手をメインに話を進めます。
話半分で読み進めて頂ければ幸いです。
コンテンツ
シグマレンズの存在感
フォベオンセンサー搭載カメラ、シグマSD15
レンズレビュー
使わない機能は無いほうがいい
レンズ内手振れ補正が付いていないのもまたメリット
いい点、ズームやフォーカスで全長が変わらない
ズームリング、フォーカスリングの滑らかさ
絞りリング
フィルター径105mm
描写性能
まとめ
シグマレンズの存在感
最近、ニコンからも同様スペックの120-300mmf2.8レンズが発売された。
でも、このシグマのレンズが発売されたのは、2005年7月、ニコンから発売されたのは2020年2月。という事で、シグマはニコンが同スペックのレンズを発売する15年も前に発売された事になる。
120-300mmf2.8というスペックは15年間唯一無二のレンズだったのだ。
他社の出していない、革新的な120-300mmf2.8のハイスピードスペックのズームレンズを、こんな昔から出していた、シグマさんの先進性、パイオニア的存在感、そのすごさを感じる。今でもこのスペックのレンズを出しているのは、シグマとニコンだけ。
さらに上のトンデモレンズを出しているシグマさん、その上には200-500mmf2.8の超ど級レンズを出しているから驚きだ。
単焦点でも存在しない500mmf2.8をズームで。
現在のカメラ市場の中で、最強トンデモレンズといってもいいだろう。
使い勝手どうのこうのというレンズではもはや無いというか、そんな事に有無を言わせない超ど級の存在感のレンズだ。
ニコンを除いた他社の望遠ズームレンズ、f2.8通しのレンズといえば、200mm止まり。
明るさを一段落としてf4としても、200-400mmの焦点距離だ。
そんなレンズたちと比べると、その変態加減が感じられると思う。
そんな、とんでもレンズを出し続けているシグマさん、変態の域に入るかと思われる管理人自身、なにか仲間意識を感じたり、愛着を感じるのであった。
フォベオンセンサー搭載カメラ、シグマSD15

シグマSD15 にニコンの50mmf1.2をマウントアダプターを介して取り付けている
そんなシグマさんからは、カメラボディでも他社のやらない革新的なカメラを出している。
フォベオンセンサーを使用したカメラだ。管理人はその中の一台、古いがSD15を今でも使っている。発売日は2010年6月だから、12年前のカメラになる。
このカメラもなかなかの曲者、非常に動作が鈍く、高感度が使えないが、きまった写真のトンデモ発色、トンデモリアル存在感には、いつも息を呑まされる。
なぜそんな発色をするかといえば、理由はその撮像センサー。
一般的なデジタルカメラは、単層のベイヤー配列センサーを使用している。
配列は赤、緑、青、緑、といった感じ。
単層なので感度的には優れるが、赤、青、緑と色の三原色を含めるには4画素必要で、1画素当たりに含まれる色情報は1/4。
だから出力される画像の色のリアリティがなにか不足した感がある。
比べての話。
そんな欠点を補ったセンサーがフォベオンセンサー、1画素の中に層となって赤、青、緑の素子が含まれているのだ。
出力される1画素1画素それぞれに、薄められていない全てのRGB色情報が含まれている。色汁100%の濃厚な色が味わえる。
出力される画像の色密度が高いので、画面に映し出される画像は非常にリアルなのだ。
比べて、一般的なベイヤーセンサーを使用したカメラの色は4ピクセルで1セットなので、色汁25パーセントという事になる。
ローパスフィルターでぼやかし混ぜて、再びシャープにしたりと処理も多くなるので不自然感も発生するのだ。
フォベオンセンサー万能か?といわれれば、そんな事は無く。
欠点として、センサーの構造が層なので、感度的に劣るのは想像に難くない。
実際使ってみて、使える感度は、ISO100がせいぜい。
そんな、尖ったカメラ作ってくれたりするのも、またシグマさん。
今回、ここに乗せている120-300mmf2.8レンズの写真はすべてSD15にニコンAi Nikkor 50mm f1.2を使用している。
ちなみに上のSD15の写真はニコンD200(2005年12月発売)を使用。
既に17年前のカメラ。
昔のCCDを使った高感度ではあまりきれいに撮れないカメラも、感度を下げて撮れば、最近のカメラではなかなか出せない、きれいな発色をしてくれるのだ。
D200だとISO100か200がせいぜいかな。
参考:写真の色、印象に残る色はどんな色?ニコンD70、D200、D3、D800E、D850に見る色の変化
フォベオンセンサーで撮ったレンズの質感、やたらリアルに見えないだろうか?
レンズレビュー

ニコン使いの管理人、レビューはもちろんニコン製。
このシグマ、APO 120-300mm EX DG HSM
2005年の発売から、世代を重ね、手振れ補正などが搭載され、外観デザインも今風に洗練され現在に至る。
しかしながら、初代の2680グラムと軽量?だった重量は、3390グラムと、710グラムも重くなってしまい、271mm(フード別)だった全長は、20mm伸びて291mmと一回り大きくなっている。
この差は結構大きく、2本のレンズを比べると、全く別物のレンズに感じるほどだ。
手振れ補正が入ったにしろ、大きくなりすぎではないか?
画質に関しては、かなり良くなったようだが、これは使っていないのでネット情報の受け売り。
このレンズの魅力はなんといっても、通しでのf2.8という明るさ。
焦点距離も300mm。
あのサンニッパがズームで使えるというイメージだ。
サンニッパといえば今も昔も夢のレンズ、(管理人の感覚)。
管理人自身このレンズを使う事は結構多い。
といっても、そのメインの使用場所は、写真よりも動画での野生動物撮影だ。
よくこのレンズに組み合わせて使用するカメラは、パナソニックのマイクロフォーサーズ。
野生動物撮影でよく使うのだ。
だから焦点距離的には2倍相当となり、フルサイズ換算の焦点距離は、240-600mmf2.8。
なんともフルサイズではありえない、野生動物撮影するのに非常に魅力的なスペックとなる。
さらにGH5のEXテレコンを使用すると、1000ミリぐらいになるのかな?
ちょっと調べてみると1.4倍とあった。だとすると336-840mmf2.8というスペックだという事になる。
性能的には、開放ではふわりと柔らかく描写されるが、f5.6に絞るとめちゃめちゃシャープ。
GH5での撮影、ノーマルで撮ったのか、拡大されたEXテレコンで撮ったのか区別は出来ないほど高性能の解像度。
勿論、フルサイズでも周辺まで非常にシャープ、写真でも十二分の画質を出してくれる。
というか、写真用のレンズなのだが。
画質に関しては後ほど。
マイクロフォーサーズを使用しての野生動物の動画撮影、これはなかなかおいしいレンズだ。
このレンズの魅力を管理人が初めて知ったのは、かれこれ7年前、2015年から1年以上にわたって、タンザニアのセレンゲッティ国立公園他で、ライオンやチーターなどを撮影するのにこのレンズを使ってから。
高画質でありながら使い勝手のいいレンズだと、日本に帰国後すぐに、同レンズを購入した。
購入したのは、とある目黒にあるカメラ屋さん。箱と保護フィルターの付いた新品同様品。
使わない機能は無いほうがいい

レンズ右側にはEX/SIGMAのタグ、唯一の飾りと思ったら左にもあった
シンプル・イズ・ベスト!
野生動物の動画撮影となると、この焦点距離ではほぼ間違いなく、三脚などに固定されたビデオ雲台を使用する。
という事で手振れ補正は不要の代物。
撮影現場がアフリカのサバンナが多い管理人にとって、その耐久性、信頼性に関しては非常に重要。前にも書いたが再び。
道中激しく振動する車に常に揺られる環境では、やはり壊れにくい、シンプル・イズ・ベストという事になる。一度の撮影で1ヶ月以上ぶっ通し撮影、走る道のほとんどは未舗装路。
レンズが使えなくなってしまっては話にならない。
このレンズ、非常にシンプル、スイッチ類が一切付いていない。
フォーカスリング、ズームリング、絞りリングの三つのリングに三脚座が付いているだけ。
三脚座は取り外し可能だが、取り外して使う事は無いな。
手持ちでの写真撮影でも管理人は三脚座に手を置いて撮影する、そうしたほうがズームリングやフォーカスリングの指先を使っての微妙な操作がやりやすいから。
レンズ内手振れ補正が付いていないのもまたメリット
手持ちでの撮影で非常に重宝する手振れ補正だが。
レンズ内手振れ機構などのハイテク、精密機構は壊れやすいという事に結びつく。
上記のような苛酷な環境で使っていると補正レンズが光軸の真ん中に戻らなくなってしまったりするのだ。
そうなるとどうなるか?
画面が標準、広角系のレンズだと偏ボケになったり、右半分でピントが合っているのに、同一距離だというのに左の一部がピントがボケたようになったり。
望遠だと全体のピントが甘くなる感じかな。(管理人が今まで経験したもの)
そんな症状が現われた時は、電源や手振れ補正のスイッチを、オンにしたりオフにしたり。
大抵はそれで戻るのだが、それでも戻らない時は、レンズを外して振ったりと荒業を使用。
それでもまだ戻らないと、手振れ補正の付いていない別のレンズを使ったり。
手振れ補正機能が原因で、レンズが使えなくなるようでは何のための手振れ補正か分からない。
手持ちでの写真撮影、動画撮影などでは、非常に重宝する機能でも、しっかりした雲台を使うことが前提であれば、まずいらない機能。
使わないのであれば、無きに越した事無いのだ。
いろいろ機能があるのは便利だったりするが、いい事ばかりでは無いのだ。
以前使わせてもらったタムロンの150-600mm、使い始めは非常にシャープだったのだが、使ううちに画質が悪くなった。
おそらく、手振れ補正レンズが真ん中から少しずつずれていった事が考えられる。
是非是非、メーカーさんには改良をお願いしたいしだいだ。
レンズ内手振れ補正がないレンズのメリットは、個々のレンズは確実に光軸上最良の場所に配置されているという安心感だろう。
もう一つ、メーカーによっては手振れ補正がONの状態で三脚を使うと、手振れ補正レンズが暴れ出したりしてしまう物もあるようだ。
揺れていないと落ち着かないレンズ。
こういった点も改良をお願いしたいが、もうされているのかな?
いい点、ズームやフォーカスで全長が変わらない

上から順に、ズームリング、フォーカスリング、三脚回転座、絞りリング
このレンズ、ズームリングを回しても、フォーカスリングを回しても、レンズの全長が変わらない。
これもまた、非常に大きなメリット、動画撮影中ズームしても、レンズの重心が大きく変わらないので、一旦前後バランスを取ってしまえば、後はあまり動かす必要がない。
60-600、150-600などズームと共に大きく伸びるレンズの場合、ズームする度に雲台のバランス調整が必要だ。
この120-300ズームを動かすと多少バランスが移動するが、ビデオ雲台(ザハトラFSB4)を使えばズーム全域において手を放してもバランスが取れるようになる。
それと、レンズが密閉された構造なので、埃の多いところで、ごみがほとんど中に入らないので安心。
ズームリング、フォーカスリングの滑らかさ
静止画撮影にも言える事だが、動画撮影においては、フォーカスリングやズームリングの動きの滑らかさは静止画の比にならないぐらい非常に重要。
その動きがそのまま映像となるのだ。
このレンズ、現在管理人の持っているレンズの中でリングの動きの滑らかさはいちばんいいかもしれない。対抗するのはニコンのマニュアルレンズ50mmのf1.2。
硬すぎず、やわらかすぎず、非常になめらかに操作出来る。
動き始めカクカクと動き出す事も全く無く、超微妙な動きも自由自在。
一眼用オートフォーカスレンズでこの滑らかさ、作り手の極限までのこだわりを、ものすごく感じるレンズだ。
こういったカタログにも数値的に表現できないところを完璧なまでに仕上げる、シグマさんの技術陣営の魂を感じるのであった。言い過ぎか。
それぐらいフォーカスリングの動きは滑らか。
フォーカスリングだけでなくズームリングの動きもまた、めちゃくちゃ滑らか。
トルク感も、それぞれ完璧だ。
ゴムローレットの滑り止め、指にしっくりと食いついてすべりづらく使いやすい。
ズームリングもフォーカスリングもその幅といい、絶妙のバランスで配置されている。
ズームリングがフォーカスリングよりも一回り太くなっているのも、絶妙に操作性を良くしてくれている。
両リングとも全域にわたって業務用ビデオレンズに匹敵する滑らかさと操作性だ。
ものすごいこだわりの超高精度の技術陣の魂のこもった工作精度なのだろう。
業務用レンズ、操作性は飛びぬけているが、値段も飛びぬけているのだ。